多重債務の解決相談のサイトなどを見ていると、おまとめローンをお勧めする記述をよく見ますが、注意点も有りますので、個人再生を実施した人間の視点で書いてみたいと思います。
おまとめローン
おまとめローンとは
おまとめローンというのは、一つの金融機関が、顧客の複数のローンを一本に束ねて再融資する金融商品のことを言います。事業者としては、クレジットカードやカードローンでメインとなっている信販会社などでは無く、銀行系の事業者のほうが多いようです。
おまとめローンのメリット
金融商品として成立している以上、商品としての魅力・メリットも当然あります。それは
- 複数のローンが束ねられるため、返済が単純になり管理しやすい
- 極度額の大きいローンで再融資するので、金利が安くなる
この金利が安くなるのが最大のメリットになると思います。100万円以下のカードローンでは大抵年利18%。安いところでも15%ぐらいになっていますが、これを3-4口まとめて300万円のおまとめローンにすると金利は5-6%になるとおもいます。これだけで月々の返済額は小さくなりますし、返済日を給料日直後に置いておけば、返済不能になって慌てる心配も少なくなります。
おまとめローンのデメリット
一方で、デメリットもあります。
- 新たなローンを組みづらくなる
- 個人再生に至った場合、単独過半数の債権者になってしまうため、再生計画に不同意を出されてしまうと再生計画が不認可になってしまう
そもそも、おまとめローンで再融資を計画している人が個人再生による債務整理を視野に入れているのは本末転倒ではあるのですが、おまとめローンを組んでしまうと、普通の新規ローンで新たな融資を受けることが難しくなってくるため(新たな融資を新たにおまとめローンでまとめられるぐらい極度額に余裕があれば問題ないですが、債務整理に至るような人でそのような余裕がある人は少数でしょう)不慮の出費を金利の高いカードローンで支払ったりするとあっという間に首が回らなくなってしまいます。
小規模個人再生をする場合、単独過半の債権者がいる場合は要注意
小規模個人再生の場合、債権者から再生計画に対する消極的同意を得る必要があり、認可条件は
- 債務額の過半数に当たる債権者が合意すること
- 過半数の債権者が合意すること
の両方の条件が満たされていることが必要です。おまとめローンの場合は、沢山の債権を一社で纏めることになりますので、単独過半の債権者となることが普通です。更に、おまとめローンを組む人が債務整理しなくてはいけない状況に落ち込むのは、おまとめローンにしてからさほど時間が経過しない(せいぜい2-3年)場合が多いため、債権者としても、再生計画に容易に合意できない事情もあります。これは融資実行の際に、近い将来不良債権者であることを見抜けなかった事になるためです。
この為、おまとめローンを組んでいる人は、小規模個人再生を申し立てする際には弁護士さんとよく相談する事をお勧めします。
特に債権者が楽◯銀行系の場合要注意です。楽◯銀行系債権者は債権額が一定金額以上の場合は有無を言わせずに不合意表明をする傾向にあるようです。
任意整理の場合は、場合によっては有利になるかも
一方で、任意整理の場合は、債権者毎に返済条件等を交渉することになりますので、債権者数が少ないおまとめローンのケースは有利になる場合もあります。おまとめローン実行者が同意すれば、任意整理交渉が完了するからです。
個人再生では厳しい態度を取ってくる楽◯銀行も、任意整理には寛容だというネット情報もあります。
ただ、おまとめローンにする時は既に一度多重債務状態になっていると思います。この状態で数年踏みとどまっている方なら良いのですが、おまとめローンが債務整理への一里塚に過ぎない人の場合、おまとめローンを作って直ぐに(2年以下ぐらい)債務整理になることもあると思います。この場合、おまとめローンの債権者が任意整理に難色を示す場合があります。そうなると、小規模個人再生の再生計画に対しても否認されてしまい、最終的に自己破産しか選択肢が残されない場合もありえます。
おまとめローンの選択条件
以上より、おまとめローンにするなら、新たなローンを作る必要がなく、月々の返済に支障のない状態になっているかどうか、よく確認したほうが良いと思います。
少なくとも、債務額が年収を越えてしまっているような人は、おまとめローンを作る前に、専門家に相談したほうが良いと思っています。