弁護士さんのところに債務整理の相談に行き、手続きを始めると、最初に「受任通知」というものを出します。これは「これからこの人は債務整理をしますよ」と言う事を債権者に宣言するようなものです。
受任通知とは
受任通知とは、債務者が弁護士に債務整理を依頼したという事を債権者に通知する文書です。これにより、債権者は債務者がもはや通常の債務返済が不可能になったことが分かります。
受任通知のメリット
借金取り立てが無くなる
受任通知は法律上の効力をもっており、これにより、債権者は新たな取り立てをできなくなります。(貸金業法21条1項および債権管理回収業に関する特別措置法(サービサー法)18条)
従って、今まで返済に追われ、返済のために新たな借入を繰り返していた状況から開放されることになります。これは大きなメリットです。
ただし、受任通知は債務の消滅を示すものではなく、今後債務の詳細を確定させ、その後、何らかの方法(任意整理、特定調停、個人再生、自己破産など)による債務整理が行われるという事を宣言しているだけです。
受任通知のデメリット
新たな借入はできなくなる
債権者はそれがカードローンであれば新たな借入が出来ないようにしますし、クレジットカード会社であればクレジットによる新たな買い物が出来ないようになります。
また、カードローン会社やクレジットカード会社は、債務者が返済不能な状況になっている事をデータベースに登録します。これがいわゆるブラックリストと呼ばれているものです。
カード会社によっては、定期的にブラックリストの参照を行っているようで、僕の場合も受任通知発送時点では全く利用していなかったクレジットカード会社1社から「信用上の理由でカードが使えなくなりました」という通知が送られてきました。この会社は、定期的にブラックリストを参照して、問題のある利用者を抽出し、カードを止めたのでしょう。信販系カード会社でした。
銀行のローンの場合、口座凍結・預金との相殺が行われる
現在、貸金業法により、信販会社や消費者金融業者から多額の借金をしている人は少なくなってきたと思います。一方で増えているのが銀行が発行するカードローンです。銀行は貸金業法の規制を受けないので、年収の1/3を越えた借り入れが簡単に出来てしまいます。僕の場合も債務の過半がメガバンクの発行するカードローンでした。
受任通知が出されると、債権者は自己防衛の為に出来ることをします。
銀行の場合、債務者の口座を凍結し、預金と債務との相殺が出来るようになっています。給与振込口座を持っている銀行でカードローンの債務がある場合、銀行は口座を凍結し、債務者が預金引き出しを出来ないようにした上で、給与が入る毎にそれを債務相殺のために使ってしまいます。
ですので、受任通知を出す前に、カードローンのない銀行に給与などの振込入金のある口座を変更しておく必要があります。
保証人がいる債務の場合、保証人に督促が行く
連帯保証人がある債務の場合、受任通知が出されると、債権者は債務者本人への督促はできなくなりますが、その代わりに保証人へ督促を行うようになります。連帯保証人というものは債務者本人と同等の返済義務をもっていますので、債権者は保証人へ督促する権利を持っています。また、上記法律も、保証人への督促は制限していません。
従って、保証人のいる債務がある場合、受任通知を出す前に保証人に対して債務返済が出来なくなっていることを説明しておく必要があります。
どうしようもない場合、保証人もろとも債務整理をするということも選択肢としてはあります。
受任通知を出して貰う前によく確認しておきましょう
このように受任通知は債権者からの督促を止める効果がある反面、預金の相殺や保証人への督促などの逆効果もありますので、弁護士さんと一緒によく確認をしましょう。
弁護士さんに相談に行く時点では一日も早く借金返済を停止したい状態だと思います。弁護士さんもそういう依頼者の状況を忖度して早期に受任通知を出そうとしますが、準備不足な状態で受任通知を出してしまうと思わぬデメリットがありますので注意しましょう。
次回は、弁護士さんを訪問してから受任通知を出すまでにどんな話し合いをしたかを書きたいと思います。