前回、個人再生の再生計画において、弁済額は最低弁済額か清算価値の高い方で決定されることをお話しましたが、今回は、その清算価値の計算の仕方をお話します。
清算価値とは
清算価値とは、個人再生申し立て時点での所有財産のことですが、意外なものも含まれますので注意が必要です。
https://www.kanaben.or.jp/format/data/20160325_05.xlsx
出展:www.kanaben.or.jp/format/data : 神奈川県弁護士会
上のExcelシートを見ていただければ分かりますが、財産として認定されるのは次の項目です
- 現金
- 預金
- 貸付金・過払い金
- 積立金等
- 退職金見込額(1/8)
- 保険解約返戻金
- 有価証券(時価)
- 自動車・二輪車(時価)
- 高価品など(時価)
- 不動産(時価)
- 敷金(返戻金)
- その他
となっています。個人再生では、債権者に渡る配当が自己破産よりも少なくなることは、民事再生手続きの不許可事由に該当します。一方で、自己破産の際には破産者が保有している一定以上(概ね20万円以上)の財産は換価され、その金銭を債権者へ配当します。従って、個人再生の際にも、「換価可能なものはすべて算入する」というスタンスになっています。
個人再生では清算価値保障原則により、弁済総額は、自己破産の場合の配当率よりも高くなければなりません。
僕も実際にやるまで、退職金の1/8が申し立て時の財産に算入されるとは思いませんでした。
では、それぞれについて、説明を追加してゆきます。
現金
100万円までの現金は持っていても良いことになっています。また、100万円までの現金は清算価値には算入されません(生活費・運転資金の意味合いがあるのでしょうか)
預金
預金はそのまま清算価値に算入されます。ですので、清算価値が最低弁済額を上回るときは、現金との間で調整したほうが良いことになります。
貸付金・過払い金
最近は少ないと思いますが、少し前だと消費者金融からグレーゾーン金利で借り入れていた人も多いと思います。その際には先に過払い金の返還を受けることが前提となります。
弁護士に債務整理の相談に行くと、真っ先に過払い金返還対象の債務がないかどうか確認されます。
僕の場合、そのような負債はありませんでした。
積立金など
積立年金や財形貯蓄などが相当します。これらが有るときには、金額によって、清算価値に含めるか、申し立て前に現金化するかを判断します。
退職金見込額
申し立て時点で自己都合退職した際の退職金を算出し、その1/8を清算価値に参入します。僕の場合、毎年退職金の見込額が会社から通知されるので良かったのですが、会社によっては総務に問い合わせないと教えてくれない場合があります。きちんとした計算ないし書類を提出することが必要なので、概算は許されません。なので、人によってはこの時点で会社バレか会社が疑いを持つことが考えられます。もし、会社から書類を貰わなくてはいけないなら、その前にできるだけ庶務さんと仲良くなっておきましょう。
保険解約返戻金
満期返戻金の有る生命保険などがある場合、申し立て時点で解約した際の解約返戻金を算入しなくてはいけません。僕は保険は全て掛け捨てだったので、ここで算入される金額はありませんでした。
有価証券
株や債券があれば、申し立て時点で売却した際の価値を算入します。僕はわずかですが持株会に入っていましたので、申し立て時点の株価に持ち株数をかけて算入しています。
自動車・二輪車
自動車を持っていた場合、申し立て時点で売却した際の価値を算入します。この為、ガリバーとかに行って中古車価格の見積を取る必要があります。
中古車屋さんもそういう事例はかなりあるようで、「売却意図はないけど、見積もりが欲しい」と言えば作ってくれます。「本当に売るときにはうちに声かけて下さいね」と言われましたが、見積は快く作ってくれました。
僕の場合、見積額は2万円だったので、そのまま乗り続けています。
自動車ローンが残っている場合、再生処理の前に、自動車の価値でローンを相殺する処理が行なわれるので、車を持ち続けることが出来ないことが多いです。残額が少ない場合など、持ち続けることが出来た事例も報告されています。
高価品など
宝石など換金可能な高価品があった場合も、見積を提出します。僕の場合はこのような品物はすべて妻の持ち物でしたので、関係ありませんでした。
不動産
個人再生の最大のメリットが持ち家をそのまま持ち続けられることですが、不動産の価値は財産として算入されます。ただし、住宅ローン残高は差し引かれます。バブルが完全に崩壊する前に住宅を購入した場合、多くのケースでオーバーローン(借入金残高が不動産価値を上回っている状態)になっていると思います。また、住宅購入から日が浅い場合も、不動産の減価より住宅ローン残高が減るほうが遅いので、オーバーローンになっていると思います。ですので、住宅ローンを完済した場合以外は大きな問題にならない場合が多いと思います。
敷金
借家、借地の場合は、退去した際に返戻される敷金を算入する必要があります。
その他
その他、現金化可能なものがあれば申告しなくてはいけません
僕の場合は清算価値が最低弁済額を下回っていましたので、最低弁済額をベースに再生計画を作成することになりました。
次回は、申し立てのために必要な書類などについて書いてゆきたいと思います。