さて、だんだん本題に入ってゆきます。今回は個人再生のシステムについてお話します。その人の借金の状況、収入の状況によって、適用可能な人、残念ながら適用できない人がいますので、最終的には弁護士さんと相談しながら進めてゆきます。大事なこととしては、意外な点が個人再生を申請する上でのキーポイントだったりしますので、弁護士さんには包み隠さず話すことです。
個人再生における負債圧縮効果
借金額 | 最低弁済額 |
100万円以下 | 全額 |
100万円以上500万円未満 | 100万円 |
500万円以上1500万円未満 | 借金額の5分の1 |
1500万円以上3000万円未満 | 300万円 |
3000万円以上5000万円以下 | 借金額の10分の1 |
まず、上の表とグラフを見て下さい。元々の負債額(横軸)に対して、負債圧縮後の最低弁済額 (縦軸)を示しています。グラフの傾斜からも分かる通り、借金が多いほど弁済額の比率が下がるようになっていますので、借金額の多い方ほどメリットが出る方法になっています。この金額は法律に定められており、どの人にも一律に適用されます。ただし「最低」と書かれている通り、この条件が適用されるにはいくつかの条件があります。
- 弁済額は財産総額と最低弁済額のうちの高い方になる
- 個人再生には、小規模個人再生と給与所得者再生の2種類があり、上記最低弁済額が適用されるのは小規模個人再生を適用した場合である。
それぞれ、細かく解説すると長くなるので、詳細は別エントリーで書こうと思いますが、簡単に説明します。
1.弁済額は財産総額と最低弁済額のうちの高い方になる
については、申し立て時点での財産総額が負債額から導かれた最低弁済額より大きくなってしまうと、財産総額が弁済額となってしまうということを言っています。
この財産総額が曲者で、
- 所有不動産(申し立て時点での(居住家屋の市場価値)ー(住宅ローン残高))
- 退職金予定額(申し立て時点で自己都合退職した際の退職金予定額の1/8)
- 任意で積み立てている財形貯蓄など
- 満期や死亡返戻金のある保険の解約時返戻金
- 自動車などの動産
- 現預金
等を全て足した金額となります。保険については解約するかしないかに関わらず、財産に組み込まれます。基本的には解約して現金化するように言われる事が多いと思います。
僕の場合、不動産に関しては、バブル崩壊のあおりを受けて、返済20年経過したにも関わらず未だオーバーローン(借入金が不動産価値を上回る)状態で、財産価値ゼロという悲しい結果でしたので、全部足しても総財産が200万円ちょっとしか無く、最低弁済額の300万円より安かったのですが、不動産ローンの返済状況や自動車の売却時価値などが大きくて、財産総額が最低弁済額を上回ることも多いと聞いています。
2.個人再生には、小規模個人再生と給与所得者再生の2種類がある
個人再生には制度上、小規模個人再生と呼ばれるものと、給与所得者再生という2種類の方法があります。上記最低弁済額が適用されるのは小規模個人再生を適用した場合です。小規模個人再生は自営業者または給与所得者に適用される物ですが、給与所得者再生は文字通り、会社勤めの給与所得者にしか適用されません。
両者の間では、弁済額の算定式が異なります。給与所得者再生の場合、
「計画弁済総額を可処分所得の2年分以上にしなければならない」との要件(可処分所得要件)があります。この可処分所得額は、再生債務者の手取収入の額から、最低生活費をマイナスすることにより算出します。
http://www.shihoushoshi.jp/kasyobun.htm
という条件があるのですが、最低生活費というのは計算方法が決まっており、大抵の場合、手取り収入から最低生活費をマイナスする事によって導かれる可処分所得の2年分は、小規模個人再生の場合の最低弁済額よりはるかに大きな額になります。
この為、一部の特殊なケースを除き、給与所得者であっても、小規模個人再生を採用することになります。比率的には8割以上は小規模個人再生になっているそうです。また、給与所得者再生で算出される、可処分所得額は収入に関係なく決まるため、収入が多い人ほど、給与所得者再生での弁済額が大きくなる傾向になります。逆に、収入が少なく、負債の多い人の場合は、給与所得者再生のメリットが出てきます。
次回以降、小規模個人再生を中心とした、個人再生のシステム、申し立ての準備について、もう少し掘り下げて解説します
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